私のご主人様Ⅱ

しばらく様子を見守って、また本に視線を落とす。

静かな部屋。季龍さんと、2人きり。

当たり前のことを自覚した途端、心臓が大きく音を立てる。

『琴葉』

「っ…」

違う。季龍さんは、違う。

あの人と一緒じゃない。

深く息を吐く。大丈夫。傍にいるのは季龍さん。部屋に鍵なんかついてない、カーテンだって開いてる。

窓から見える青い海に、高鳴った心臓が少しずつ落ち着きを取り戻していく。

大丈夫、大丈夫…。

「琴音」

「!?」

かけられた声に、大げさなくらい肩が跳ねる。

振り返ると、こちらを見つめる季龍さんと視線が交わる。

またドクンと心臓が高鳴る。
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