私のご主人様Ⅱ
「こっちに来い」
「…」
心臓は静まらないまま。本を置き、季龍さんに近づく。
なぜか手は震え、それを押さえるように右手で左手を強く握る。
季龍さんの前で足を止める。震える手はそのままで、異様な緊張が体を包んでしまっていた。
「…っ」
伸ばされた手に反射的に目を閉じる。でも、頭の上に乗ったぬくもりに恐る恐る目を開ける。
「落ち着け」
たったひと言。それなのに、緊張していた体が緩んだのを感じる。
…何を怖がっているんだろう。季龍さんたちがそんなことするわけないのに。
もし、そういうことをされるなら、買われてきた時点でそうなるはずだったんだ。
離れていく手。季龍さんを見つめると、ふっと、私を見て表情を緩ませる季龍さんに、頬が熱くなった。
こ、こんなの。ずるいです。