私のご主人様Ⅱ

「若、ここちゃん…あ、いた」

「?」

ノックもなしに部屋に現れた伸洋さんに少し肩が跳ねる。外を見るともう夕暮れで、だいぶ時間が経っていたことに気づく。

集中しすぎた。半分読み進めた本に苦笑して、ページ数を覚えて閉じた。

うんと背伸びをするとその手を伸洋さんに捕まれる。

「ここちゃん若になにもされてない?」

「?コクン」

「なにバカなこと言ってんだ」

「え~、ここちゃんの水着見たでしょ?ムラムラしてないのかよ~」

「!?」

昨日の恥を蒸し返さないでいただきたいっ!ベシッと伸洋さんを叩くけど、全く気にしていない顔をされてしまった。

「琴音を道具にするつもりはない。そんな目で見るんじゃねぇ」

季龍さんは軽く資料を整えながら、伸洋さんを睨む。

伸洋さんは目を丸くしたけど、やがてやれやれと言わんばかりに息をつくと、私の頭を撫でる。

「道具になんかはしないよ。親父さんに殺される。それに、ここちゃんに嫌われたくないしね~」
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