私のご主人様Ⅱ

「お前、それやめろ」

「?」

「自分を卑下にするな。お前がここにいることで、今まで永塚組になかったものが出来た。それはお前の力だ。使用人だからと自分を蔑むな。少なくともここにいる間はお前は俺たちの家族だ」

「…」

…それは、私には大きすぎる。

私がいるからじゃない。私が来たから、永塚組のみなさんが私のために変わってくれたんだ。

私が変えたんじゃない。私のために変わらせてしまったんだ。

季龍さんに捕まれた手の力が抜けていく。

私は、そんな期待に応えられない。そんな、重圧に耐えられない。

季龍さんの手から抜けそうになった手。その手は落ちる寸前で力強く捕まれ、引き留められる。

「…琴葉」

「!!?」

「ちゃんと前を向け。俺を見ろ。お前は、宮内琴葉は、人の背を押せる力がある。お前の力は決して非力なもんじゃねぇよ」

真剣な顔で、必死に私に言い聞かせようとする季龍さんに、目が離せなくなる。
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