私のご主人様Ⅱ
ざわざわする心も、溢れそうになる思いも全部全部押し込めて、その波が静まるのを待つ。
「…っはぁ」
ゆっくり目を開ける。
大丈夫。まだ、大丈夫。顔を上げると季龍さんと視線が合って気まずくなる。
拒絶したの、ダメだよね…。あぁ、バカだ。なんで逆らってるの?うまくやって来たはずなのに。そんなこと、しちゃダメなのに。
「…琴音」
「…」
「…戻るぞ」
屋敷に向かって歩き出す季龍さんの背を見つめる。
なぜか足が動かない。ついていこうと思っているのに、足はその場から動かない。
また空を見上げる。さっきまで満点の星空だったのに、薄い雲がかかって星の輝きが霞んでいる。
「琴音」
「…」
視線を向けると、かなり離れた場所に季龍さんがいる。それでも、足は動いてくれない。
視線をそらすと、微かに聞こえた舌打ちと共に立ち去っていく足音が聞こえる。