私のご主人様Ⅱ

「お母さんっ!」

「…」

呼んでも、叫んでもお母さんは離れていく。いくら手を伸ばしてもその手を掴むことも出来ない。

暗闇がお母さんをさらっていく。ずっと手の届かないところへ連れていってしまう。

「…なんで?」

揺らいでいく。いつの間にか足は動かなくなって、お母さんは私を置いていってしまう。

「…おかあさん」

呼んでるのに、なんで止まってくれないの。なんで笑ってくれないの。なんで抱き締めてくれなかったの。

『ごめんねぇ、琴葉』

なんで、置いていっちゃったの?

なんで、いなくなっちゃったの?

「っうわぁぁぁあああ!!」

泣いたら、帰ってきてくれる?我慢したら、帰ってきてくれる?

なんでもするから、そばにいて?

いいこになるから、だから、おかあさん、きらいにならないで…。

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