私のご主人様Ⅱ
「あいつ、いないんだな」
「!?」
唐突に声をかけられ、顔を向けると麻夏くんが冷めた目で季龍さんの席を見つめている。
その視線が私に向くと、冷たさは消える。でも消えただけで愛想なんかない。それが麻夏くんらしいなぁって思ったり…?
「ひさしぶり。葉月さん」
「コクン」
「課題いつ終わった?」
『7月中には』
「やっぱ早いんだね」
自然な動作で前の席に座った麻夏くんは、表情こそ乏しいけど、いろんな話をしてくれる。
心配してくれてたのかななんて、ちょっと嬉しくなったりする。
『ちょっとずつ声、出せるようになってきた』
「ふーん。よかったね。そのうち聞かせて」
「コク」
焦らせない麻夏くんのペースも全然苦になることはなくて、話す楽しさのようなものを感じた。