私のご主人様Ⅱ

「琴音ちゃん、どこ行ったの~?ねぇねぇ」

「…」

ただのクラスメイトたちならまだしも、あの人の耳に入るのはまずい気がする。

それに、季龍さんのファンたちを煽るようなことしたくない…。

タブレットの画面を消し、机にしまう。話はおしまい。こんなところでプライベートな話を堂々と出来るほど、私の状況は安全じゃない。

何度も声をかけてくる麻琴さんを無視して、先生が来るのをひたすら待ち続ける。

罪悪感がなかったなんて言えないけど、能天気に笑って、プライベートを堂々と口にできる麻琴さんを少しだけ妬んだ。

「琴音ちゃん?」

「麻琴邪魔。どっか行け」

「っはぁ!?麻夏どういうことよ!!」

「はーい、席ついて~」

ケンカが始まろうとしたとき、タイミングよく現れた先生。

麻琴さんは不服そうにしながらも席に戻っていく。

「麻琴がごめん。言っとくから」

「“ごめんね”」

「悪いのは麻琴だから」

麻夏くんに伝わったかはわからない。でも、麻夏くんはわかっているような気がした。
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