私のご主人様Ⅱ
「な・ま・え!教えて!私は高崎詩音。詩音って呼んで欲しいな」
「…」
さっきよりも強引に、さりげなく名前呼びを要求する高崎さんに呆気に取られる。
季龍さんは高崎さんを睨み付けると舌打ちしスマホを持つ手を引き、立ち上がる。
そのまま教室を出ていく季龍さんを、高崎さんは追いかけようとする。その手を掴んで止めたのは季龍さんに群がっていた女の子で、その間に季龍さんは姿を消した。
教室が静まり返る。振り返った高崎さんは表情がなく、昨日の嫌な予感が頭を掠めた。
「詩音ダメだよ~。抜けがけみたいなことしちゃ~」
「そうだよ~?私たちだってみんなで声かけてるんだからさぁ」
高崎さんを咎める言葉はまだ優しさを含んでいる。裏に刺があることはもちろん否めないが…。
高崎さんは不意に口角をあげる。だが、その目は全く笑っていない。
その目に彼女の本質が見えたような気がして、勝手に手が震えた。