私のご主人様Ⅱ
とりあえず高崎さんを無視してかばんを持ち、離れる。
残念だけど、私は今自分の身の安全が最優先だ。誰かに優しくできるほど余裕なんか持ってない。
これで薄情者だと罵られる方がまだましだ。
「葉月さん、こっち」
「!」
手を伸ばして私のかばんを持ってくれたのは麻夏くんで、有無を言わさず彼の隣にかばんは置かれた。
「正しい選択だと思う。いくら正論でも、あの人に非があるし。葉月さんが巻き込まれることはないよ」
「…“ありがとう。ごめんね”」
お礼も謝罪も伝わったのか、麻夏くんは当然といった顔で私を見る。
「えぇ、葉月さんひどーい。無視しないでよぅ」
私が悪いというようにやって来た高崎さんは、少し怒った顔で私を見る。そして、当たり前のようにまた私の隣にかばんを置くと、手を掴んできた。
そのまま引っ張られそうになったけど、麻夏くんがその手を掴んで止める。