私のご主人様Ⅱ
それなら分かる。琴音が媚を売ってこないことも、そんな感情を抱いていないことも。
頬から手を離し、視線を外に向ける。
俺の手が離れた瞬間、琴音の緊張が解けたのを見ない振りをした。
そうしなければ、この苛立ちを琴音にぶつけてしまうような気がした。
「…」
なんで、苛ついてんだ、俺は。
琴音が俺のことをどう思っていようが関係ねぇだろ。
こいつは、永塚組に必要で、家事をさせるためだけの道具。それ以上の付加価値なんかいらねぇだろ。
道具としては完璧なほど仕事もよくやる。無駄なこともしねぇ。組員たちからもその腕は評判。おまけに容姿もいい。
それで十分だろ。それだけで、こいつを買った価値は十二分にある。
なのに、この苛立ちはなんだ。
俺は琴音に何を求めている?