私のご主人様Ⅱ

車が止まると、すぐに出て屋敷の中に入る。

琴音から少しでも離れるため。琴音を視界に入れないため。

だが、苛立ちを抑えきれず、部屋に入るなり机の上に散乱した資料をぶちまけた。

「…ッくそ」

なぜ俺だけにあんな顔をする。俺があいつを傷物にした訳じゃねぇだろ。

他の奴には笑い、甘えるくせに、どうして俺だけ…。

…“琴音”と名付けなければ良かったのか。“あいつ”の名をつけたせいか?

この苛立ちは、そのせいなのか…。

訳の分からない苛立ちに振り回されそうになるのを抑え、深く息をつく。

…仕事をためすぎたせいかもしれねぇ。早く片付けなければ。

ぶちまけた資料を回収し、机に向かう。

そのまま集中していたが、伸洋に呼ばれ、向かった夕飯の席に琴音の姿は見当たらなかった…。

季龍side end
< 318 / 323 >

この作品をシェア

pagetop