私のご主人様Ⅱ
車が止まると、すぐに出て屋敷の中に入る。
琴音から少しでも離れるため。琴音を視界に入れないため。
だが、苛立ちを抑えきれず、部屋に入るなり机の上に散乱した資料をぶちまけた。
「…ッくそ」
なぜ俺だけにあんな顔をする。俺があいつを傷物にした訳じゃねぇだろ。
他の奴には笑い、甘えるくせに、どうして俺だけ…。
…“琴音”と名付けなければ良かったのか。“あいつ”の名をつけたせいか?
この苛立ちは、そのせいなのか…。
訳の分からない苛立ちに振り回されそうになるのを抑え、深く息をつく。
…仕事をためすぎたせいかもしれねぇ。早く片付けなければ。
ぶちまけた資料を回収し、机に向かう。
そのまま集中していたが、伸洋に呼ばれ、向かった夕飯の席に琴音の姿は見当たらなかった…。
季龍side end