私のご主人様Ⅱ
田部さんは季龍さんのお父さんの分だけ前に用意すると、自分の分を持ち立ち上がる。
「では琴音さん。ごゆっくり」
そう言うと、部屋を出ていく田部さん。
あ、あれ?まさか本当に季龍さんのお父さんと2人きり?
少し緊張してきた…。自然と背筋が伸びて直立不動になる。
「座りなさい。立ったままでは食べられないだろう」
「“失礼します…”」
季龍さんのお父さんの正面に置かれた座布団をすすめられ、遠慮しつつもそこに腰を下ろした。
改めて部屋を見ると、最小限の掃除はされているようで一目で汚いとは思えない。
季龍さんのお父さんの背には立派な竜の掛け軸と、恐らく日本刀が2振り飾られている。
そして、なぜかその隣にはガラス張りのショーケースに入った白い薔薇の花束のようなものがある。
この純和風のお部屋には少しだけ浮いてしまっていた。