私のご主人様Ⅱ
「こちらが求める条件は1つだけ。ここの家事全般をしてほしい。それをしてくれるのなら、身の安全は保証するし、こちらから危害を加えるつもりもない。それは、キミの前にいた女性にも同じ条件だった」
「…」
そういえば、ここに連れて来られたとき季龍さんにも言われた。
望むのはここの家事のすべてをこなすこと。出来なければ売り飛ばすと付け加えられて。
頷くと季龍さんのお父さんはお茶を飲んで息をつく。その間にパクリとお好み焼きを頬張る。
「だけどね。誰もキミのようにはこなしてはくれなかった。それどころか、季龍に媚を売るばかりで家事をしない人もいたし、…中にはスパイもいた」
「!?」
スパイって…あのスパイだよね?そんな人もいたんだ…。
季龍さんのお父さんは、お好み焼きを箸で摘まみ、冷笑を浮かべる。その笑みに背中にぞくりと悪寒が走る。
「スパイで入った人わね、食事に毒を混ぜた。組員の3人が死んだ。何人かは後遺症を抱えて今も苦しんどる。…わしの足もその後遺症だ」
「っ…」
そんな…スパイだからって、そんなこと…。
人の命を奪おうとするなんて、恐ろしくてそんなこと絶対に出来ない。
季龍さんのお父さんはパクリとお好み焼きを食べる。躊躇しないその行動が、信頼していると言われているようだった。