私のご主人様Ⅱ

「あのような場所で売られるほとんどは裏社会と少なからず繋がりがある場合が多い。その危険を甘く見すぎたわしのミスだ。あれのせいで死んだ組員に今でも顔向けできん」

「…」

「そこからは少し慎重になったけれどね。組だから普通に家政婦をお願いしてもやっぱり続かなくてね…。危険を犯してでも人身売買に手を出すしかなかった。見張りをつけるようになったのはそれからだね。それでもうまいこといかなくてね…気付けば屋敷は荒れ放題、出前とコンビニ生活だった」

思い浮かぶのはここに来た直後に見たゴミ屋敷かと疑うほどの酷い台所や洗い場。手入れされていない庭も雑草だらけだった。

どうやってここに住んでいたのか、悩んでいたのは今でもよく覚えてる。

でも、そんなことがあったら取っ替え引っ替えに使用人を連れてくることもできないよね。

この人たちは常に命を脅かされながら生きている。そんな世界なのだと少しだけ思ってしまった。

「そんな時だったよ。反対する季龍を押し切って行ったオークションでキミを見つけたのは。キミの顔を見てすぐに分かったよ。この子なら大丈夫だとね」

「…!」

顔を見て大丈夫だって分かるの…?

会ったことがあるから?でも、本当に覚えてない。一体どこで会ったんだろう。

会ったときに私は何をしたんだろう。

思い当たらなくて混乱していると、季龍さんのお父さんは口角を上げて笑う。
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