私のご主人様Ⅱ

「宮内琴葉さん。陣之内家の奥様付きの使用人。…そうだろう?」

「ッコク」

フルネームまで…。いや、でもフルネームは季龍さんが調べたって言ったから知られててもおかしくないのかな。

でも、どうしてだろう。季龍さんのお父さんは私のことを覚えてくれていた。そう、思ってしまう。

私が覚えていないのに変な感じだけど、調べられているとは思えなかった。

「わしがこんなことを言うもの変だが、名前は大事にしなさい。…キミは自分の名を大切にしていたのは名乗ったときの顔でわかった。嬉しそうに、どこか自慢げな顔をしていたね」

「!?」

そんな顔してるの、私!?た、確かに名前は好きだけど…そんな顔してたなんて恥ずかしいっ!!

顔が火照って、頬を両手で包む。流石に恥ずかしい。自覚がないだけ、余計に…。

「話を戻すが、キミを見たときこの子なら大丈夫だと分かっていたからね。言い方は悪いが、キミを買った。わしにとっては不幸中の幸いだった。キミにとっては不幸でしかなかっただろうが」

徐々に頬の火照りが引いて、顔をあげる。季龍さんのお父さんはお好み焼きの最後の一切れを食べてしまう。

「琴葉さん、手間はかけるだろうが、わしの家族を頼んだよ。キミはここを確実にいい方向へ変えている。昨日の夕食を見ていてわかったことだ。自信を持ちなさい。キミは周囲を優しくできるようだしね」

その言葉の重みは、他の言葉よりも重たくて、自分がしていることがそれだけ責任があるんだって言われているようだった。
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