私のご主人様Ⅱ

『あ、あの!この子たちよろしければ連れていってあげてくださいっ!』

不意に蘇ったのは、車に乗り込む直前だった人を呼び止めて、薔薇の花束を差し出した時の記憶。

その時受け取ってくれた男の子は驚いた顔で私を見て…。

「!!」

も、もしかしてあの時の!?

季龍さんのお父さんを見ると、ニヤリと笑う。

「思い出したかい?キミはこれを持って追いかけてきて、季龍に手渡したんだよ」

そうだ。確かちょうど2年前の春。なぜか旦那様の来客を対応したとき。

その時やって来たお客様を、旦那様はまるで相手にしなくて、お客様はすぐに帰られてしまって…。私はその人に薔薇の花束を押し付けて…。

うわぁぁああああ!!頭を抱えて項垂れる。

思い出した。思い出したけど!!あれは後で物凄く怒られた最悪の対応だったんだー!

お客様の要望もないのにあんなもの押し付けるなとメイド長の雷が落ちて、旦那様には余計なことするなと散々言われた。

あれ以来トラウマで、お客様の口から欲しいと言われるか、奥様たちから用意しろと言う言葉が出るまで絶対に動かなかった。
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