私のご主人様Ⅱ
「今さらだけど、ありがとう。キミのお陰であの人を思い出せる」
「!」
首を横に振る。私も嬉しいもん。
こんなにこの花を愛してくれる人がいて、あのまま捨てられずに大切にしてくれて、嬉しいんだ。
笑うと、季龍さんのお父さんも嬉しそうに笑ってくれる。
「だから、キミなら大丈夫だと言っていたんだけどね…。前のこともあってなかなか2人で話をさせてくれなかったわけだ」
あ、そこに戻って来るんだ。
でも、いくら薔薇を渡したからって、それだけで信用できるかと言われれば難しいと思う。
特に前に死者が出る騒ぎがあったというのなら尚更警戒は強いはず。
それでも信じてくれた。それは、季龍さんのお父さんにとって、あの薔薇がそれだけ大きかったということ。
それが誇らしいような、恥ずかしいような不思議な気分だった。
「そういえば、名前をまだ言っていなかったね。永塚源之助(ながつか げんのすけ)。70のじいさんだ」
源之助さん…改めて頭を下げると、下げた頭を撫でられる。
その感覚がお父さんを思い出させて、鼻の奥がつんとする。多分、酷い顔をしてる。だから顔をあげられなくて、歯を噛み締めて感情が収まるのをじっと待った。