私のご主人様Ⅱ

これはチャンス?奏多さんに視線を向けて、ゆっくり口を動かす。

「ん?…た、め、し…試しって何って…」

読み取ってはくれた。だけど、奏多さんも暁くんと同じように固まって、しばらくしたあと、まるで何どこもなかったかのような離れていく。

…奏多さんもか!!

教えてくれたっていいのに!!伸洋さんを見ても、視線が全然違うところを向いてる。

もうっ!何で誰も教えてくれないの!

奏多さんの手をブンブン振っても視線はそらされたまま。暁くんも、伸洋さんにも無視される。

頬を膨らませ奏多さんに抱きついてみたら、やっと困ったような視線を向けられた。向けられただけで教えてくれそうにはないけれど…。

「琴音ちゃん、どうしても思い出したくないから。ごめんね?」

「…」

…そんなに、嫌な記憶なんだ。悪いことしちゃったな…。ごめんなさいと何とか伝えるとよしよしって頭を撫でられる。

やっぱり今度、源之助さんに聞こう。多分その方が確実だもん。

奏多さんたちにトラウマを残すほどの何かがどうしても気になって仕方ない。
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