旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「杏璃が、ピアノに対する気持ちと向き合うチャンスをくれた。自分の本音に気づかせてくれた。……こんなかっこ悪い俺を、守ろうと、必死になってくれた」
それは、私の言葉が、ムダじゃないと伝えてくれている。
「だから俺も、勇気を出さなきゃいけないって。そう思えたんだよ」
私のおかげだなんて、嬉しい言葉をくれる。
その言葉と抱きしめる腕が嬉しくて、心の奥で愛しさが膨らんだ。
抱きしめてくれる彼の心臓の音が、背中からドキドキと伝わってくる。それにつられるように、この心臓も音を立てた。
愛しい、その感情がより強く込み上げる。
「いつか、あのピアノでも聴かせてくださいね」
いつの日か、あの部屋にあるピアノの音色をその指が奏でることを想像して呟くと、耳元で彼が微笑んだ気がした。
……耳の奥に、まだ彼の音色が残ってる。
夜空に浮かぶ明るい満月を見上げながら、そのメロディーと、彼の言葉を、しっかりと心に刻んだ。