旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
そんなモヤモヤとした気持ちを抱えたまま、迎えた水曜日。
19時を迎えた新宿駅で、私は花柄のスカートと肩に羽織った青いカーディガンを揺らし人ごみの中を急ぎ足で抜けた。
「あっ、杏璃!こっちこっち」
東口に出てすぐ、こちらに向かってひらひらと手を振る結花を見つけて手を振り返す。
「ごめん、遅くなっちゃった……」
「相変わらずギリギリ遅刻だよねぇ、杏璃」
「出がけにノワールにスカートに泥つけられて……着替えてたらこの時間で……」
余裕を持って出てくる予定だったのに……。
笑う結花に、息を切らせながら顔を上げると、その隣にはひとりの男性の姿があった。
この人が、結花の彼氏の友達……とよく見れば、それはスーツを着た背の高い男性。
面長な輪郭に彫りの深い顔、右で分けた黒い髪、とどこかで見た顔をしている。
あれ、この人どこかで……。
その印象は彼も同じらしい。私の顔を見て、少し驚いた表情を見せる。
「杏璃、紹介するね。私の彼の大学の同先輩で、関さん。関さん、この子が私の友達の杏璃です」
『関さん』、結花が言ったその名前に思い出す。
どこかで見た記憶がある彼は、先日玲央さんと行ったパーティーで会った、最低最悪なあの男だったこと。
「あっ……あー!!」
思わず関さんを指差し大きな声を出してしまうと、周囲の人々が何事かとこちらを見た。