旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……璃、杏璃!おい!」
「はっ!はい!」
ぼんやりとしていた朝。
玄関の方から響く玲央さんの声に、私ははっと我に返りリビングから玄関のほうを覗き込む。
「悪い、テーブルの上にハンカチ置いたままだ」
「あっ、はい!」
見れば確かに、ダイニングテーブルの上には私が綺麗にアイロンをかけておいたハンカチが置いたまま。
私はそれを手に取ると、慌てて玄関へ駆けつけた。
「どうぞ。他に忘れ物はないですか?」
「あぁ」
玲央さんはハンカチを受け取ると、ジャケットのポケットにしまう。
その顔はいたって普通、いつも通りだ。
「きょ、今日の帰りは何時頃になりそうですか?」
「……たぶん、21時は過ぎると思うけど。どうかしたか?」
「いっいえ!なんでも!なんとなく聞いてみただけで!」
あはは!とわざとらしいくらい明るい声で誤魔化すと、玲央さんは「そうか」と特に気に留めることなく鞄を手にした。
「じゃあいってくる」
「はい、いってらっしゃい」
そして近づいてきたノワールの頭を軽く撫でると、ドアを開けて家を出た。