旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「けど、それで杏璃が傷ついてちゃ意味がないだろ」
そして腕を伸ばすと、正面からぎゅっと私を抱きしめた。
「れ……玲央、さん?」
人通りの多い道の端で、行き交う人々がこちらを見ている。
まるでドラマのよう、と頬を緩める人と、人前なのにと怪訝そうな顔をする人、様々な人の視線に、自分の手の行き場がわからなくなる。
けれど、ぎゅっと頭を抱き寄せるその力強い腕に従うように、その胸に顔を押し付けると、ドキ、ドキ、と心臓の音が強く響いた。
「さっきも言っただろ。大切な奴を傷つけて得るプライドに価値なんてない、って」
「けど……」
「俺にとって杏璃は、ただの嫁のフリじゃない。大切な存在なんだよ。そんな相手を守りたいと願う心は、俺も同じだ」
真っ直ぐに伝えてくれる彼が言う、『大切な存在』。
その言葉に含まれた意味は、どこまでのものなのかはわからない。
だけど、深い深い意味であってほしいと、願っている自分がいる。
その想いを表すように、行き場のなかった手で、玲央さんの背中をぎゅっと抱きしめ返した。
守りたい。
傷ついてほしくない、笑っていてほしい。
そう、強く願ってる。
私はあなたに、あなたは私に。
互いに強く、願ってる。