旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
『……お客様、失礼いたします』
『え……?』
そう言って俺は、彼女の体をそっと抱き上げた。
戸惑うけれど、抵抗するほど力も入らないらしく大人しく抱き上げられた彼女の体は、その細さから想像した通りとても軽い。
ところがその次に聞こえたのは、『ぐうううぅ~』という、これまで聞いたことのないような腹の音。
一瞬驚き固まってしまってから、彼女を見れば、青色から赤色に変わるその顔色から、その音は彼女から鳴ったこと、そしてその顔色が悪い原因を察した。
つまり顔色が悪かった原因は、疲れでも酔いでもなく……極度の空腹、というわけだ。
『す、すみません……!』
恥ずかしそうに涙目で顔を赤くする彼女に、思わず俺は噴き出して笑ってしまった。
『へ……?』
『悪い、いや、予想外すぎて……空腹って!あははは!』
『なっ!』
最初は堪えていたものの、最終的には声をあげて笑ってしまった。そんな俺に、彼にその顔は耳まで真っ赤になる。
きっと、食事をすることも忘れるほど一日中夢中になっていたのだろう。
そんな彼女の真っ直ぐさがなんだかかわいらしい。