旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



ただの空腹ならそれはそれで安心して、それから俺は彼女を控え室に案内し、レストランのシェフに頼んで食事を用意した。



大きな口で食べて、心から幸せそうに笑う。

そんな感情のままに表情を変える彼女の姿は、見ているだけでこの心を明るくしてくれた。



……それがまさか、超がつくほどの大食い女だとは思わなかったけれど。



それからうちのホテルのランチビュッフェに度々通うようになった彼女は、三浦杏璃といって、その細い体からは想像できないほどの量を毎回食べていく。

彼女が来るたび厨房のシェフたちが『奴が来たぞ』『今日は多めに作らなければ』と気合を入れるほどだ。



『ん~っ……おいしい!』



その笑顔は明るく、幸せそうで、つられて笑う自分がいた。

そんな彼女のことを気に入っていたからこそ、仕事が見つからないと聞いたとき、運命的ななにかを感じた気もした。



あそこまですんなりと了承してくれたのはまた予想外だったけれど……単純なところがラッキーだと思う反面、成人女性としては少し心配だ。



嘘の婚約者、そんな関係で縮まった距離が、少し嬉しく感じられた。




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