旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……あれ、」
その日の夜。
今日の仕事を終えそろそろ帰ろうかと、最後にホテル内をぐるりと一周見回りをしていた俺は、最上階にあるレストラン前である姿と行きあった。
「……げ」
俺を見た途端、眉間にシワを寄せ嫌そうな顔をしてみせたのは、同業者でありライバル会社である品川クイーンズホテルのオーナー、関。
ホテルの評判や売上、客層……それらがほぼ同等で、俺たち自身も同じ歳。
当然なにかと比べられることも多く、表面上は笑顔で接しているものの、内心ライバル意識はお互い強く持っている。
それは関も同じ……というか俺より強いようで、それはなにかと姑息な手を使ってでも俺を突き落としてやろうというその精神から伝わってくる。
そしてつい先日も、杏璃を巻き込んでの出来事があったばかりだ。
「これはこれは、関オーナー。わざわざ当ホテルに来てくださるなんて、ありがとうございます」
にこりと笑って声をかければ、その目はじろりと俺を睨む。
「誰が好き好んでここに来るかよ。仕事相手がどうしてもここのレストランで飯食いたいっていうから渋々ついてきてやっただけだ。勘違いすんな」
よほど不服な気持ちで来たのだろう。
小声ながらも俺に対し苛立つ本性が隠しきれていない口調で言う関に、俺は思わず「ふっ」と鼻で笑う。