旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「そういえばこの前のこと、結局周りには言ってないみたいだな」
思い出したように言う俺に、関はそもそも言いふらすつもりなどなかったのだろう。その話題には触れられたくなさそうに眉間にシワを寄せる。
「……つーかなんなんだよ、お前とあの女。本当にただの夫婦のフリか?」
「そうだけど?」
「ありえねー……あいつ、俺がお前をバカにした時『勝ちたいならそんな姑息なことしないで仕事で成果出せ、ガキ』って啖呵切ってシャンパンかけたんだぞ」
あ、杏璃……。
啖呵切ったとは聞いていたが、そこまで言っていたとは。
真っ直ぐというか無鉄砲というか、怖いもの知らずというか……。
そりゃあ関も怒るわけだと苦笑いがこぼれる。
「あいつはお前を守ろうとしてて、お前はあいつを守ろうとして……ただの他人が、そこまで思い合えるものなのかよ」
……そう。
杏璃はいつも、俺のことばかり守ろうとする。
俺のために、俺のことを、と。いつも自分のことよりも。
自分が『妻のフリだから』。俺が『雇い主だから』。
その前提があるから、守ろうとするのだとわかってる。
だからこそ、俺も『守りたい』と言葉に出来るんだ。