旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「お前も、大切な相手が見つかればわかるよ」
ふっと笑うと、俺は「けど」と言葉を付け足し関のジャケットを引っ張ると、顔を近づける。
「次また杏璃に触れたら、覚えとけよ」
強くしっかりと言い聞かせるように囁くと、手を離してその場を歩き出した。
彼女が嫁のフリをしてくれるから、守りたい?
……違う。理由はきっと、それだけじゃない。
そんな立場なんて言い訳にしかすぎない。
他の誰かじゃダメなんだ。
初めて出会ったあの日、まっすぐな笑顔を見た瞬間から、心は掴まれ離れない。
愛しいから、守りたい。
「……帰り、ケーキでも買って行ってやるかな」
そう、ひとり小さくつぶやくと、少し浮かれた足取りで帰路へと急ぐ。
幸せそうにはしゃぐ、彼女の笑顔を思い浮かべて。