旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
そしてそのまま彼につれられやってきたのは、先日も訪れたガーデンタワー東京。
けれど向かったのはいつもの最上階のビュッフェではなく、29階にあるイタリアンレストランだ。
まだ客の少ないレストランの奥にある個室席で、丸テーブルを挟む形で彼と向かい合い座った。
そして間もなく運ばれてきた牛肉のステーキとサラダ、ライスが私の前に並べられた。
「い、いいんですか……?私、お金とかありませんけど」
「あぁ。いいよ」
いつも意地悪いことばかりを言ってくる彼の突然の優しさに、なにか裏があるんじゃないかと疑ってしまう。
けれど、綺麗に焼けていい匂いを漂わせる牛肉を目の前に『いらない』とはとても言えず……私はフォークとナイフを手に、牛肉を一切れぱくっと食べた。
「んん~……おいしい!生き返る!」
「死んでないだろ」
「それくらい幸せってことです!」
噛むたびあふれる肉汁に顔を緩めると、立花さんはグラスの中の水を飲み「そうかよ」と笑う。
たったそれだけのことで、つい先ほどまでの警戒心はすっかりなくなってしまった。
はぁ、と嬉しい溜息をこぼしながら、続いてライスも口に頬張る。
「で?なにがあってあんなところで座り込んでいたんだ?」
「えーと、それが……」
ごちそうになっておいて事情も話さないのは失礼だろう。そんな思いから私はここ最近のことを話した。
会社が突然倒産したこと。再就職先がなかなか見つからず、苦戦していること。
そして、今日の面接もダメで心が折れてしまったこと。