旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
……の、はずが。
朝食の時、チェックアウトの時、帰りの車の中……と、ことごとく私は玲央さんと普通に話すことが出来ず。
目が合うと顔を背けたり、話を振られるとわざと檜山さんに返してしまったり……結局まともに接することは出来ずに、あっという間に家に着いてしまった。
「……はい、着きましたよ」
家の前に車が停められ、檜山さんの言葉を合図に私と玲央さんは後部座席から降りる。
「お疲れ、檜山。行き帰り悪かったな」
「いえ。タダで旅行出来てラッキーでした」
「お前時々秘書とは思えないような言い方を真顔でするよなぁ……」
運転席に乗ったままの檜山さんと、玲央さんは開けた窓越しに話すと、トランクから自分の荷物を取り出す。
私も続いて荷物を取り出したのを確認すると、檜山さんは車を走らせその場を後にした。
ふ……ふたりきりになってしまった。
気まずいし、部屋に荷物置いて仕事にとりかかろう。
「の、ノワール元気かなぁ!長谷川さんにお世話は頼んだけど……」
そうそれとなく話題を逸らしながら、鞄から立花家の合鍵を取り出し、鍵穴へ差し込む。
すると突然、玲央さんは背後からドアに手をつき、ドアと自分の間に私を挟む形になった。
背中に当たる彼の体に、また胸はドキ、と音を立てる。
「れ……玲央、さん?」
「……そんなに露骨に避けられると、傷つくんだけど」
私の態度がおかしい理由を、彼もわかっているのだろう。
耳のすぐそばで響く低い声に、いっそう彼を近くに感じる。