旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



「瑠奈。まずは自己紹介から。ちゃんと名乗って挨拶しろ」

「えー?別に名乗らなくても瑠奈のことくらい知ってるでしょ?」



自信満々に微笑むけれど、分からずにきょとん、と首をかしげる。

そんな私に彼女は、表情を一転させ、信じられないといったように眉間にしわを寄せた。



「はぁ!?わかんないの!?ありえない……人気バイオリニストの三嶋瑠奈だよ!?知らないの!?」

「は、はぁ……すみません」



彼女……瑠奈さんというらしい。

人気バイオリニストと言われても、音楽業界のことなど疎いものだから、わからない。



「ここは外国でもなければ杏璃は音楽関係者でもないんだから当然だろ」



そんな私の気持ちを代弁するように、玲央さんは言ってくれる。



「で?いきなりなんの用だよ」

「もう、冷たい言い方!あっ、ねぇ、ちょっとそこの人!ジュース買ってきて!100%グレープフルーツジュースがいい!」

「こら、質問に答えろ。それと杏璃を使おうとするな」



子供のように自由に話を変えて「飲みたい飲みたい飲みたいー!」と騒ぎながら、細い足をバタバタとさせた。



「あ……じゃあ私買ってきます」

「いや、いい。俺が車出して買いに行く」

「えっ、けど……」



ドアに向かい歩き出そうとする私を手で軽く押さえ、玲央さんは棚の上の車のキーを手に取る。


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