旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……ってわけで。だからもう実家帰ろうかなって、ちょっと諦めてます。今日の面接で言われたことも、ちょっと正解だなって思っちゃったし」
『正解』、そう呟いた私にその目はこちらを向く。
「っていうのは?」
「たしかに私、これまでなにもしてこなかったから。好きなものだけあればいいって、目先のことしか考えてなかった」
食べるために生きている。そう開き直って、向上心もなく現状で満足して、これからのこと、もしものことなんて考えなかった。
『言われたことだけしかやらないような社員じゃ使えないよ』
そんな私に突きつけられた言葉は、痛いくらい刺さって、胸を詰まらせる。
「……自業自得、です」
小さく呟くと、フォークを持つ手を止めた。
「杏璃」
「はい?」
不意に名前を呼ばれ顔を上げると、目の前には差し出されたスプーン。
立花さんが持つそのスプーンには白い泡のようなものがのせられており、私はつい条件反射でそれをぱくっと食べた。
口に含むとふわっとした食感と濃厚なチーズの甘み……これは。
「マスカルポーネ!」
「正解。マスカルポーネとバニラのエスプーマだ」
「おいしい~!最高です、これ!」
一瞬にして顔を明るくした私に、彼はスプーンを置きながらおかしそうに笑う。