旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
瑠奈は母方のいとこであり、自身もバイオリニストとして幼い頃から活動している。
綺麗な顔立ちに華奢な体、そんな見た目はもちろん、バイオリニストとしての腕ももちろん素晴らしく、さらには英語やフランス語など5ヶ国語が話せる。
幼い頃からそんな優秀さを感じさせていた彼女を、母や周りの親戚は『いつかは玲央のお嫁さんがしら』なんて冗談交じりに言い……。
本人も俺によく懐いていたものだから、それを本気にして『玲央くんと結婚するのは瑠奈!!』と宣言していた。
……子供の頃は流せたが、まさかそのまま大人になって、しかも本気で言い続けているなんて。
一途なところはいいところだ。本当に優秀な人だとも思う。
だがあのプライドの高さだけは、どうにも合わない。
あの瑠奈が杏璃になにを言ったか……なんて、ある程度想像できる。
あぁ、やっぱりふたりきりにさせるべきじゃなかったな。
けどあそこで瑠奈のために杏璃を使うのは違うし、嫌だし、だが杏璃をひとりあの家に残しておくのも不安だったし……。
どうするべきが正しかったのか、未だにわからず俺はうーんと頭を抱え身支度を始めた。
いつもの出勤時間より一時間ほど早く、俺はホテルへとやってきて、仕事を始めた。
まだ時間はあるし、少し館内じっくり見回りするか……。
今日の仕事は、昼間に経営会議、その後は夕方からのパーティー準備だ。
今夜はうちの親会社主催の親睦会……親父はもちろん来るんだろう。
顔の知れた会社の人々とはいえ、挨拶して愛想振りまいて……面倒だ。
そう、ホテルのバックヤード内にある社長室を出て、俺はまずはフロントへと向かった。