旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「……もう一度聞く。昨日杏璃になに言った?」
冷静に再度問いかけると、瑠奈は不機嫌そうに顔を背ける。
「べつに……なにも言ってないもん」
「じゃあなんで杏璃がいきなり出て行った?」
「知らないもん!自分が玲央くんにつりあわないってやっと気づいたんじゃないの!?」
『つりあわない』、瑠奈のその言葉に思い出したのは、昨日杏璃が去り際に見せた表情。
『玲央さんだって、結婚相手はもっと本気で、真剣に選ばなきゃダメですよ』
そう言って、悲しげに歪んだ笑み。
俺がいない間にふたりの間に起こった会話が、想像からほぼ確信に変わり、俺は瑠奈のすぐ横にあった壁を拳でガンッ!!と思い切り殴りつけた。
「……そうやって上から目線で、杏璃を傷つけるようなことを言ったのか?」
静かに湧き上がる怒りが、伝わっているのだろうか。瑠奈はビク、と身を震わせて、唇を噛む。
「なによ、杏璃杏璃って……瑠奈だってずっと玲央くんのことが好きだったのに!なんであんな、大してかわいくもない、なんのとりえもない普通の貧乏人にとられなきゃいけないの!?」
かわいくない?とりえもない?普通?
……杏璃の、どこが?