旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「えっ……れ、玲央さん?」
驚きを隠せず、小さな声で問いかけるけれど、彼は答えることなくそのまま再度ステージへとあがった。
沢山の人の好奇の視線が一気に向けられ、息が止まりそうだ。
な、なんでいきなり……。
ちら、と玲央さんを見ると、彼は私の手をぎゅっと握って小さく笑う。
「こちらの彼女……三浦杏璃さんと、正式に結婚いたしますことを、ご報告いたします」
そして発したひと言は、まさかの言葉だった。
正式に、結婚?
って、え……?なんで、そんな、いきなり。
驚き目を丸くしていると、客席からは「おぉ!」「えぇ!?」と喜ばしい声や驚きの声が聞こえてくる。それに対しても玲央さんは平静を見せたまま。
「彼女自身はつい先日まで小さな会社で事務員として働いていた、事業とは無縁の方です。経営に関しても、彼女が望まない限り携わってもらいたいとは考えておりません」
ぎゅ、と握る手は力強く、その想いの強さを伝えてくれるかのようだ。
「……正直、学歴や家柄、育ちがどうとあれこれ言う方もいるでしょう。ですが、彼女以上に安心感や愛しさを感じられる人はいません。彼女だからこそ、一緒にいたいと願います」
安心、愛しさ、一緒にいたい。
玲央さんははっきりとした、けれど穏やかな声で言い切った。
「杏璃を、愛しています」
愛して、いる。
玲央さんが、私のことを。
どんな言葉よりもストレートで、疑いようのない言葉を、こんなにも多くの人の前で宣言してくれている。
「未熟者ですが、これからも会社のため、家族のため一層業務に励む所存です。ご指導ご鞭撻くださいますようよろしくお願い致します」
玲央さんはそう挨拶をまとめると、一礼をして私を連れてステージを下りる。
その堂々とした挨拶に、会場中からは大きな拍手が響いた。