旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
玲央さんはそのまま会場を出ると、私の腕を引いたまま建物から出た。
そして、ひと気のないガラスのチャペルに入ると、大きなドアを閉め、ふたりきりの空間で向かい合う。
人々の視線から解放されたものの、この胸はまだ、驚きで震えている。
「な、なんで……いきなり、正式に結婚なんて……」
「別におかしいことじゃないだろ。前から言ってたはずだ、お前は俺の嫁だって」
そりゃあ、言っていたけど……それはフリというか、仕事としてというか。
そう言い訳を探す私に、玲央さんはこれが夢ではないことを報せるかのように、私の頬をぎゅっとつねった。
「つーかお前は、なに関に乗り換えようとしてるんだよ。ホイホイついて行きやがって、バカ女」
うっ……。
別に乗り換えようとかそんなことは一切ない。
けれど、ホイホイついていってしまったのは事実なものだから、私は反論できずされるがままだ。
そんな私に、玲央さんは呆れたように息を吐くと、頬をつねっていた手を離し、両手でそっと私の顔をつつんだ。
迷いのない目は、真っ直ぐに私を見つめる。
「余計な言葉に耳なんて貸すな。瑠奈や周りがなに言ったって関係ない。俺は、杏璃のことが好きなんだ」
私だから、好き……。
彼が伝えてくれる想いに、私も胸の内の本音をこぼす。