旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
そのままちら、と左手から壁へと視線を移す。
白い壁にかけられたゴールドと白の掛け時計は、『12』の数字を指している。
今は夜、その時計が指す時刻は昼間の12時ではなく深夜の0時だ。
こんな時間にもかかわらず、玲央さんはまだ帰ってきていない。
今日は朝から出勤したから、19時には帰ってきてもいいはず。だけど、代わりに彼から届いたのは『悪い、付き合いで遅くなる』のメールだった。
というのも、『正式に結婚する』とあれだけ堂々と宣言した彼を、周囲が放っておくわけもなく。
あの日以来、結婚祝い、だの残り少ない独身生活の思い出に、だの、様々な理由で食事や飲みに誘われることが一気に増えて……。
結果、玲央さんは毎日のように出かけてしまう日々。
そして私は、この大きな家でノワールとともに留守番ばかりの日々だ。
「はぁ……今日も玲央さん遅いね、ノワール」
ため息まじりにつぶやくと、足元のノワールが同意するように『クゥーン』と小さく鳴いた。