旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「ワンっ」
そうひとり考えていると、突然聞こえた犬の声。
その声に呼ばれるように振り向くと、いきなり目の前には大きな影が現れた。
「へ?えっ……ぎゃっ、ぎゃーーー!!」
その影は勢いよくこちらへ飛びかかり、私は成すすべなくそれに押し倒された。
閑静な住宅街の中で悲鳴を響かせ地面に背中をぶつけると、上に乗ったそれ……大きなゴールデンレトリーバーは、じゃれるように私の顔をベロベロと舐めた。
な、なぜ犬が……。
「……なにしてるんだ、お前は」
そんな私に、悲鳴を聞いて家から出てきたらしい立花さんは、玄関のドアを開け呆れた顔を見せる。
「なにって……この犬のせいですよ」
「不審者には飛びつくようにしつけてある。ノワール、こっちに来い」
「不審者!?」
ワイシャツにネクタイ、黒いベストという仕事着姿の彼が手招くと、ノワールというらしいその犬は「ワフッ」と声を出して私の上から玄関へと向かう。
うう、顔ベトベト……。
体を起こし立ち上がると、その間に立花さんは、私が倒れた拍子に手放してしまったボストンバッグを拾うと先に家に入っていく。
それに続くように家に入ると、そこには大きな玄関と、目の前にはらせん状の階段という光景が広がっていた。