旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「お、おじゃまします……」
不慣れなその雰囲気に圧倒されながら靴を脱ぎ、一歩踏み込むと、木目の床がギシ、と小さく軋む。
そのまま彼についていくように歩けば、通されたのは玄関から左手側にある広々としたリビング。
そこからダイニング、キッチンと続いている。
「す、すごいですね。てっきりマンション住まいかと思ってました」
「知人から紹介された物件でな。少し古いが、その古さも気に入ってる。だから、まめに手入れや掃除頼むぞ」
たしかに、雰囲気あるかも……。
えんじ色の横長いソファと、部屋の広さに相応しい大きめのテレビ、艶めく茶色いテーブル……生活感はそれなりにあるのに、この家自体が漂わせる雰囲気のせいか、違う世界に入り込んだようだ。
キョロキョロと落ち着きなく部屋全体から天井までを見渡す私に、立花さんは思い出したように言う。
「あ、あと玄関右手の部屋だけは入るな。掃除もしなくていいから」
「へ?あ、もしや食料庫とかですか?心配しなくてもそこまで食べ尽くしたりは……」
「違うけど。なんでも、だ」
立花さんは、それ以上の言葉を遮るように、私の頭を軽くコツンと小突く。