旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「お前の嫁としての仕事は主に、掃除・洗濯・買い出し・必要時の俺のサポートとノワールの世話。俺の仕事に関しては関わらなくていいし、料理の支度は専属の調理師がいるから」
「せ、専属の調理師まで……」
「2階にはお前の部屋が用意してある。荷物置いたら早速今日の掃除頼むな」
それだけを言うと、立花さんは左手の腕時計を見て、スーツのジャケットと鞄、車のキーを手に持つ。
「じゃああとは頼んだ。俺は仕事に行く」
「えっ!?そんなざっくり……」
もっと詳しく教えてくれるとばかり思っていた私は、彼を引きとめようとする。
けれど立花さんはそれに止まることなく歩き出した。
「今日から、せいぜい旦那様のために尽くすんだな」
その偉そうなひと言と、去り際の横顔に嫌味な笑みを浮かべて。
バタン、と閉じられたドアに、静かなリビングには私とノワールだけが残される。
な、な、な……なんて嫌なやつ!!
旦那様のためにって、つまり俺様のためにというわけで……
ムカつく笑顔!あんなのが夫、というか雇い主だなんて悔しい!
誰があんな男のために働くか。私はお給料のために、食費のために働くんだから。
そう「ふんっ」と鼻息荒く、ボストンバッグを手に持つと、とりあえずその自分の部屋とやらに向かおうと、リビングを出て2階へ向かった。