旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「三浦杏璃です。よろしくお願いします」
「杏璃さん、ですか。前のお手伝いさんとまた違ってびっくりしちゃいますねぇ」
痩せ型の細い体に、真っ白なエプロンを身につけながら、長谷川さんは顔に深いシワを寄せて笑う。
「前のお手伝いさんって、どんな方だったんですか?」
「私と同じくらいの歳の女性でしたよ。長いこと玲央坊ちゃんの元で働いてらしたんですが、遠方の娘さんと同居することになったと退職されました」
長谷川さんと同じくらいの歳、ということは60前後くらいだろうか。
そっか、あの丁寧なノートは、その人が残していってくれたものだったんだ。
ていうか『玲央坊ちゃん』って……ちょっと面白いかも。
長谷川さんから見れば坊ちゃんなのかもしれないけれど、聞き慣れないその響きににやけそうになる口もとをこらえた。
「ですが玲央坊ちゃんが若い女性を選ばれるとはまた意外……『若い女は私情を挟むから嫌だ』とおっしゃっていたのに。あ、もしや坊ちゃんと恋仲で?」
「は!?いや、ないない!ないです!絶対ないです!」
こ、恋仲って……!
いや、まぁ結婚相手としてこの家に来たわけだから間違いではないのだけれど、お互いに気持ちはないわけだし、と心の中で否定しながら、頬を赤らめながらも慌てて否定する。