旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「すぐ意地悪なこと言うし、ここでお世話になるようになったのもなりゆきというか仕方なくというか……」
そんな私の反応に、長谷川さんは白髪交じりの眉を下げて、柔らかな笑顔を見せた。
「坊ちゃんは素直ではない方ですからねぇ。ですが、本当はとても心のお優しい方なんですよ」
「そう、なんですか?」
心、優しい……?
その言葉の意味を問うように首を傾げると、長谷川さんは言葉を続けた。
「私は以前、恵比寿の小料理屋で調理師として働いていたのですがね。足を悪くして長時間立つことが出来なくなってしまって、そこを解雇されてしまったんです」
「えっ!」
「路頭に迷いかけた私に『家に調理師がほしかったところだ』と雇ってくださったのが、昔からその店によく来てくださっていた玲央坊ちゃんでした」
立花さん、が……。
「ノワールもそう。貰い手がいなくて処分されかけていたところを玲央坊ちゃんが飼うとおっしゃったんです」
言いながら長谷川さんが頭を撫でると、ノワールは嬉しそうに目を細めて「へっへっ」と舌を出す。
それはまるで話の内容を理解しているかのようで、頷くような笑顔にも見えた。