旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「なっ!なんで笑うんですか!人がせっかく態度を改めようとしてるのに!」
「あぁ、よかった。そっちのほうがお前らしい」
「はっ!」
しまった、素が出た!
ハッとするものの既に遅く、立花さんはそんな私を見ていっそうおかしそうに笑った。
く、悔しい……。
丁寧な態度もあしらわれ、悔しさ頬を膨らませると、彼は靴を脱ぎながら、私の膨らんだ頬を指先でつまんで潰す。
「かしこまるなよ、普通でいい。あとその『立花さん』っていうのもやめろ。なんか堅苦しい」
『立花さん』、じゃなくて……?
「じゃあ……『玲央坊ちゃん』で」
「それはやめろ」
本人もこの歳でその呼び名は恥ずかしいのだろう。即否定し、頬から手を離す。
「玲央、でいい」
「玲央……さん」
初めて口にするその名前に、彼は口角を上げ、少し嬉しそうな笑みを見せた。
何度も見ているはずの笑みなのに、どうしてか胸が、ドキ、と小さく音をたてる。
すると彼は、なにかに気づいたように辺りを見渡した。
「家の中、ちゃんと掃除してくれたんだな。綺麗だ」
「もちろんです。前の家政婦さんの残してくれたノート見ながら頑張りましたよ!」
「そうか。頭に埃までつけてご苦労さん」
え!埃!?
そう言いながら、その埃をとってくれるのだろう。彼の指先は私の髪にそっと触れる。
不意に近づく距離が少し恥ずかしくて、赤らむ頬を隠すように目線を下に向けるけれど、少し高い位置にあるその顔が笑みを浮かべ続けているのが簡単に想像ついた。