旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
『どうかされましたか?具合が悪いようでしたらあちらで……』
『い、いえ……大丈夫、です』
『そうおっしゃいましても、顔色が真っ青です』
丁寧な言葉遣いから、彼がこのホテルの人なのだということはすぐに分かった。
でもフロントの人にしては制服を着ていないし、偉い人なのかな、若いなぁ……なんてことを考えながら立ち上がろうとした。
けれど、足に力が入らずよろけてしまい、彼は咄嗟にそれを受け止めた。
『す、すみません……ありがとうございます』
『いえ……お客様、失礼いたします』
失礼いたしますって……なにを?
そう思った瞬間、突然彼は私を抱き上げる。
人生で初めてされたお姫さま抱っこ。それに驚き戸惑う私に、彼は気に留めずそのまま体を運んでくれた。
『あちらのお部屋でお休みください。今日一日ずっと動いてらっしゃって疲れましたでしょう?』
『え……どうして、知って?』
『何度か姿をお見かけしてましたから』
そう小さく微笑んでくれる、その優しさに胸はドキ、と音を立てた。
……が、実際鳴った音は、『ぐうううぅ~』という私の空腹を知らせる音。
当然それは彼にも聞こえたようで、一瞬驚き固まり、私の顔色が悪い原因を察したらしいその顔がひきつった。