旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
『す、すみません……!』
あぁ、くだらないとか無駄な心配させやがってと思われるかもしれない。怒られるかもしれない。
そんな不安と恥ずかしさに顔を青くも赤くもさせる。
けれど、私を抱き上げたままの彼から発せられたのは『プッ』という吹き笑い。
『へ……?』
『すみません、いや、予想外すぎて……空腹って!あははは!』
『なっ!』
よほどおかしかったのだろう。最初は堪えていたものの、最終的には声をあげて笑い出した彼に私の顔は真っ赤になる。
『けど具合が悪いみたいじゃなくてよかった。健康的でなによりです』
けれど、呆れることも怒ることもせず、思わず素の顔を見せながらそう微笑んでくれる。そのあたたかさに、安心した。
それから彼は、私を控え室に連れて行ってくれて、レストランの人に頼んで大きなオムライスを用意してくれた。
それがとても美味しくて、あっという間に完食してしまって、『お金を払う』と言った私に、彼は首を横に振った。
『美味そうに笑って食べてくれたから、それでいいですよ』
そのホテルで、ビュッフェランチがあると知ったのはその後の話。
最初はお礼の気持ちで行ったけれど、あまりにも美味しくて、そのうちお礼とか関係なく通うようになっていった。
最初から、そうだ。
『相変わらずよく食うな』
からかうような言葉の合間に、そう笑顔を見せた玲央さんからは、小さな優しさが感じられていた。