旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「よしっ、綺麗になった!」
よく晴れた日の、朝10時。
窓から涼しい風が入り込む中、私は泡のついたスポンジを片手に、まくった袖で汗を拭う。
汚れひとつなくピカピカと輝く、大きめの白い浴槽や壁、蛇口や窓際。それらに私は達成感でいっぱいだ。
立花さんの家に住むようになって1週間。
もともと家事が苦手ではない私は、それなりに家のことをこなせるようになっていた。
基本的には家にひとりか、長谷川さんといるか、玲央さんといるか、ということばかりだから気楽だし、家事さえ終われば自分の時間は持てるし……間食もできる。
長谷川さんが毎日作ってくれるごはんもとても美味しいし、私の食欲を知って多めに作ってくれるのもありがたい。
この家で過ごすことにもちょっと慣れてきて、環境も条件もいいとは思う。
見た目古めの洋館風でも、浴室やトイレは使いやすく新しい機器にしてあるから不便はないしね。
「玲央さんもそろそろ帰ってくるのかなー……」
思い出したように呟きながら、浴室の給湯器のパネルを見れば、そこには『10:26』の時刻が表示されている。
昨日仕事に行った玲央さんは、なんでもトラブルがあったとかで、昨夜『今夜はこっちに泊まる』と電話があったきり、そのままこの時間まで帰ってきていない。
長谷川さんから聞けば、ホテルという休みなく稼働している職業柄、急に泊まり込みになることや休みがなくなることは珍しくはないらしい。
オーナー社長って大変なんだなぁ……。
そんなことを考えながらスポンジを置くと、ガチャ、と脱衣所のドアが開く。