旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
玲央さん?あ、そういえばもしもの時のためにと連絡先を交換していたっけ。
でもなんの用だろう?今は仕事中のはず……。
不思議に思いながら、通話ボタンをタップして電話に出る。
「はい、もしもし」
『あ……杏璃か?悪い、おつかい頼まれてくれないか』
「おつかい?」
って、なんの?
電話の向こうの彼にたずねながら、開けていた部屋の窓をそっと閉じる。
『俺の部屋の机に黒いUSBが置いてあると思うんだが、それをこっちまで持ってきてくれないか?』
「こっちって……ホテルですか?」
『あぁ。午後からの打ち合わせに使うデータなんだが、昨夜家で確認してて忘れた』
そういえば玲央さん、昨夜も夕食を食べたらすぐ部屋に向かっていたっけ。寝てるのかと思ったら仕事をしていたんだ。
そう納得しつつ自分の腕時計を見れば、時刻はすでに13時だ。
「午後からって……すでに午後ですけど」
『だから急いでるんだ。急いで持ってこい。大至急』
「えっ!?大至急って……」
それ以上話す時間も惜しいとでも言うかのように、玲央さんはブツッと電話を切った。
なっ……!なんて一方的な電話なの!
それほど慌ただしいのだろう。でも、こっちにだってまだやることがあるのに……。
「っ……もう!」
けど困っているようなら仕方ない、急いで向かうか。
私は掃除を中断させると、掃除をするのに身に着けていたエプロンを外す。
そして玲央さんの部屋に行き、確かに机の上に置かれていた黒いUSBメモリを手にして、急ぎ足で家を出た。