旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
5.旦那様はささやく
彼の困ったような笑みが、なんだか嬉しくて、愛しくて。
この胸に、ときめきを感じてる。
「ノワール!こらっ、待てー!」
「ワンッ」
ある日の、水曜日の午後。
立花家の広い庭には、水しぶきがあがるとともに私とノワールの声が響いていた。
昨日や一昨日と、梅雨らしく雨が続いたここ数日。
やっとの晴れの日に、洗濯物を干して、家中の換気をして……ついでにノワールも綺麗に洗ってあげよう、と犬用のシャンプーでその大きな体を洗ってあげているわけだけれど。
ノワールはシャンプーされている、というよりは遊んでもらっているという感覚らしく、洗っている最中も動き回るものだから、私は泡だらけのノワールをやっとの思いで捕まえた。
「つかまえたーっ!ノワール、泡流すよ!」
もう、ノワールのおかげで服も上から下までびしょ濡れだ。
濡れてもいいようにTシャツと丈の短いショートパンツに着替えて正解だったかも。
そう思いながらホースを手に取り蛇口をひねると、私から見て正面にある裏口のドアが開けられた。