旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~
「へ?な、なんですか?」
「俺はいい。お前の方が濡れてるだろ。そのままだと風邪ひくぞ」
私の、方が?
戸惑い、「けど」と反論しようとするけれど、玲央さんはそれを聞くことなく、その場にあった庭用のサンダルを履きながら庭へ出てくる。
「ノワール、泡は俺が流してやる。おとなしくしてろよ」
「ワンッ」
そして私の手からホースを奪うと、じゃれつくノワールを相手に泡を流し始める。
一応、気遣ってくれたのかな。だから私にタオルを……?
その気遣いが嬉しくて、少しにやけながらタオルで顔を拭く。
「ふふ、よかったねノワール。ご主人が洗ってくれて」
笑いながらそう彼のもとへ近づいた。
すると、足元にあったホースに足が引っかかり、私は前のめりにこけてしまう。
「あっ、わっ!」
「え?うおっ」
思い切り転んでしまったけれど、感じるのは濡れた芝生の感触……ではなく、また違う生暖かさと柔らかさ。
「いてて……あれ?」
それは、目の前でしゃがみ込みノワールの泡を流していたはずの玲央さんで、自分がつまずき彼を巻き込んで転び、そのまま芝生の上に押し倒してしまったことに気づいた。
突然の至近距離に近づく顔と、ぴったりとくっつく体。
彼が転んだ拍子に手放したホースから出る水が、そんなふたりをひたひたとしたたらせる。