長い夜には手をとって
泣きそうになるのを何とか堪えて私はひたすら話す。彼は前でうんうんと頷いて聞いていたけれど、そもそも来月の家賃が払えなくてどうしようかと思っている、というくだりになったところで頷くのをやめた。
「そう、えー、塚村さん、僕・・・いや、もう言い慣れないんで俺でもいいですか?今日はそれについて話しにきたんです」
「は?え?」
それってどれ?
私は急に話の腰を折られたことに不機嫌になって聞き返す。一人称が僕だろうが俺だろうがそんなことはどうでもいい!一体君は何の話がしたいって――――――――
彼はテーブルの上で両手を組んで、またにっこりと大きく笑う。そして言った。
「俺が代わりにここに住むからさ。そうしたら、お金の問題は片付きますよ」
――――――――――――あ?
一瞬、埴輪顔だったかもしれない。
私は口をあけっぱなしにして、目の前に座る男を凝視した。
「―――――――え?」
「だから、俺が姉の代わりにここに住みます。そしたらあなたはここを出ずに済むし―――――――」
「は、えええっ!?ななななな何!?一体どうしてそういう話になった!?」
椅子から飛び上がって私は叫ぶ。代わり!?綾の代わり!?って、あんた男じゃないのー!最初っから性別すら違うから!
「いやいやいや、代わりにならないでしょ!別にハウスメイトを募集しているわけじゃないのよ!それに募集したとしても、私は独身女性を希望したいっ!」
「俺は独身男性ですが、問題のその穴をあけた人間の家族ですよ。それに、ちょっと座ってくれませんか?ちゃんと話せば納得できると思うから」